覚えておきたい不動産担保ローンの審査基準
そもそもなぜ審査するのか
不動産担保ローンは銀行やローン会社が多様な商品を取り扱っていますが、審査なしというのは考えにくいでしょう。ローンや融資、貸出というビジネスでは貸した資金が利息付きで確実に戻ってきて、収入が継続的に発生しなければなりません。利息をもらうことがローンビジネスそのものですが、貸したお金が一向に返ってこないのも大問題です。この貸し倒れは金融機関が最も懸念することで、相手に破産されてしまっては貸したお金はそのまま損失となります。ローン審査は、確実に資金を返してもらえる人かどうか、また返済が止まったときのリスクを軽減できるかを調査することを意味します。不動産担保ローンは、できれば多くの人に利用してもらって高額な融資による利息収入を得たいという意識と、貸し倒れリスクを回避したいという意識の両方が働きます。
審査における3つの視点
不動産担保ローンで最重要とされるのが、担保となる物件の価値です。担保物件は借主が返済不能になったときに貸し倒れを防ぐために売却されます。物件をもし売却したらいくらになるのかを鑑定によって明らかにします。売却したときに回収できる資金から、融資の可否や融資額を決定します。不動産の担保価値が高ければ審査に通しやすく、高額の融資が期待できますし、逆に担保価値が低ければ審査に通りにくく、通っても高額の融資は期待できません。次に重視されるのが借主の返済能力です。担保物件を押さえてあるからといって、まったく返済能力のない人や、赤字決算の続いている法人に融資は下りません。融資する先の個人や法人の信用力は不動産担保ローンに限らず、すべてのローンにおける審査の重要項目です。この2つが最重要とされますが、かといって返済能力に問題のない人や法人が提供する担保物件の価値が、融資額とイコールにはなりません。不動産には災害による価格の下落や経済状況の悪化や風評被害による地価下落のリスクが常につきまとうため、不動産担保ローンでは掛け目という割合を不動産の評価に掛けて融資額を決定しています。平均的な掛け目は銀行では70%程度、ノンバンク系では80%程度と言われています。掛け目が70%であるとき、1000万円の評価額の不動産を担保にしたローンでは融資額は700万円となります。
ローン会社や銀行によって変動する
不動産担保ローンは、担保として不動産という大きな価値を持つものを提供するローンです。申込者の信用力は高くても、担保の土地が都市部でないために評価額が低いこともありますし、不動産の価値は充分にあっても申込者の信用力が足りないと判断されることもあります。不動産担保ローンは、カードローンやビジネスローンのように自動的にスコアリングシステムで審査しないケースが多い傾向にあり、アナログ的、人間的な審査方式が採られます。ローン会社や銀行としては、貸したお金を利息付きで返済してもらえれば良いですし、もし返済不能の場合には担保物件を売却できます。担当者から家族が保証人になるのであれば融資できるとか、掛け目を50%程度にまで落とすのであれば審査を通過させるなどといった柔軟な姿勢を見せることが多くあります。そのため、審査には多少の時間がかかると見た方がよいでしょう。
各社で審査基準が違う
不動産担保ローンは、人間的な判断が加味されることも多く、金融機関によって審査の可否や融資額決定の基準が違っています。おおよその傾向として、都市銀行よりは地方銀行のほうが柔軟ですし、ローン専門会社はもっと基準はゆるくなっています。その代わりに都市銀行の金利は低く、地方銀行、そして専門会社と行くに従って金利は高くなる傾向があります。申し込みする金融機関でかなりの違いがありますので、たとえ1社のローンの審査に落ちても、別の金融機関であれば簡単に審査に通ることも珍しくありません。不動産担保ローンは、返済不能になればその不動産を失うリスクのあるローンです。検討には充分な時間を使いましょう。できれば複数の会社や銀行、信用金庫の担当者と話し合いをしておき、熟慮して審査を受けましょう。
不動産担保ローンでの審査項目
担保価値
不動産担保ローンは、土地や建物などの不動産を担保に提供するローンです。審査で最も重視されるのは、担保不動産の価値と言っていいでしょう。提供される土地は売ったらいくらになるのか、建物はどうかといったことを審査していきます。担保として充分に価値があると判断されれば、他の返済能力に関することが多少劣っていても金融機関は貸し倒れのリスクを軽減できますので、審査に通りやすくなります。不動産担保ローンの大きなメリットは、担保があるために審査の通過率が、一般的なビジネスローンやカードローンよりも格段に高いことです。申込者や法人の返済能力や属性なども重要ですが、最終的には不動産の売却で債権を回収できれば金融機関としては良いわけです。
借主の財務状況
不動産担保ローンでは不動産の価値が最重要ですが、とはいっても金融機関は貸したお金を利息付きで完済してほしいと考えています。そのため、借主の財務状況も審査されます。提供される土地や建物の評価がいくら高くても、無職の人にローンを組ませることはありません。申込者が他社・他行からどの程度の借入があり、それをどう返済しているかという信用情報は、審査では重視されます。収入に対する借入の額が多ければ、それだけ返済には困ることになりますので、返済にどの程度の額を回せるのかということを審査します。
税金の未納は重要項目
不動産担保ローンの特徴として、税金の未納は滞納に関して厳しいという点が挙げられます。というのも、債務者が返済不能に陥って自己破産や債務整理をしたときに、たとえ抵当権が設定されていても税金の取り立てが優先されるからです。抵当権第一順位でも、税金の回収に優先権があります。担保価値は充分にあったとしても、税金の未納・滞納がある時には返済不能時に資金を回収できません。他のローンと比較しても、不動産担保ローンは税金の未納は審査では重要項目として扱われます。申込時に税金の滞納がない状態にしておきましょう。
不動産担保ローンの審査における土地の評価の仕方
土地の評価は多種多様である
不動産担保ローンで担保として提供されることの多いものが土地です。申込者が所有していて、現在は利用していない土地は担保として使いやすいからです。土地の価格の決定には、主に公示地価、基準地価、路線価、固定資産税評価額の4つがあります。公示地価は国土交通省、基準地価は都道府県、路線価は国税庁、固定資産税は市町村と、それぞれに評価している管轄官庁が異なっているため、価格には微妙な違いがあります。
路線価を利用
銀行やローン会社が不動産の担保評価として利用することが多いのは路線価です。これは相続税を決めるときに使われる価格のことで、土地の基準価格として信頼性が高いと考えられています。土地の価格は、公示地価と基準地価はほぼイコールで、路線価はそれより低め、固定資産税評価額はさらに低めに出るのが一般的です。公示歯科は売買取引での価格水準に近いですが、路線価は売買取引の価格の約80%程度に出ます。不動産担保ローンを提供する側としては、少しでも読みを固めておきたいところなので、取引水準よりも低めの路線価を使うことが多くなります。土地の価格も何かあれば変動するものですので、少しでも価格として確実なものを採用したいという意識が働いていると推測されます。
路線価の鑑定方法
路線価は文字通り、「接している道路」によって価格を設定するものです。国税庁の路線価・財産評価基準書によって確認できます。ここでは独特の表記がされているので、もし自分で調べるときには表記の仕方も併せて調べましょう。たとえば「190D」という道に接している土地は、1平方メートルあたりの価格が19万円であることを示します。190Dに接している100平方メートルの土地は、1900万円の評価です。ローンの審査では、この状態をある程度補正して融資額を決定しています。路線価と融資額はほぼ一致することもあれば、20%ほど低めに提示されることもあります。
不動産担保ローンの審査における建物の評価の仕方
不動産担保ローンの定番
不動産担保ローンで担保として提供されるものの定番として建物があります。土地とセットで自宅を担保にするというケースが多いですし、自分の所有するマンションやアパートを担保として提供して資金繰りを改善しようとする人も多いからです。不動産担保ローンの審査で注意したいのは、建物は評価が徐々に下がっているものということです。土地はある程度評価が固まっているので、ローン会社や銀行としても扱いやすいですが、建物の場合には審査では思ったよりも低い評価になってしまうことがあるので注意しましょう。
建物の評価方法
建物の担保価値は、もう1回同様のものを建て直すときにどの程度の費用がかかるのかを考慮します。これを再調達価格と呼びます。建物は土地と違って経年劣化していくものですので、再調達価格そのものを評価額とすることは稀です。再調達価格に延べ床面積と残存年数を掛けて、それを法定耐用年数という数字で割ったものが評価額の一般的な決め方です。法定耐用年数は国税庁の耐用年数・建物および建物附属設備のページに記載されているので確認してみましょう。それによると、たとえば木造や合成樹脂の建物の耐用年数は、事務所用のもので24年、店舗や住宅用で22年、飲食店用のもので20年とされています。
再調達価格から評価額を割り出す
たとえば再調達価格が1平方メートルあたり15万円の木造住宅で、延床面積が300平方メートルあり、築年数が15年とします。残存年数は22年から15年を引いた7年ということになります。15万円に面積である300と残存年数の7を掛けて、それを法定耐用年数の22年で割ると、1431万円という結果が出ます。これはあくまで評価額であり、これがそのまま融資額として反映されるわけではありません。掛け目をつけて融資額は決定されます。また、法定耐用年数を超えている場合には、建物の価格はゼロとして考えられます。担保として提供する建物の築年数は非常に重要ですので、不動産担保ローンの申し込みでは注意しましょう。
不動産担保ローンの審査で重視される返済負担率
収入と借入額の割合
不動産担保ローンだけでなく、カードローンや住宅ローンなど、様々なローンで重要な審査項目となっているのが本人の返済能力です。これは、収入に対して借入する金額がどの程度の割合なのかを示した返済負担率という数字によって示されます。無担保で借入できる通常のカードローンでは貸金業法という規制があり、年収の3分の1以上の貸出はしてはならないことになっています。これと同様、不動産担保ローンでも収入に対する借入の割合は重要です。不動産は担保としては強いものですが、土地や建物を所有しているからといって、収入がなければ審査には通過できません。
返済負担率の計算式
ここで使われるのが返済負担率です。年間の返済額が年収に占める割合を算出したものが返済負担率です。たとえば年収が500万円の人が年間に100万円の借入をしたときには、返済負担率は20%となります。1ヶ月に約8万3000円を返済する借入であるときに20%ということです。この割合は35%がボーダーラインと言われており、35%を超えると審査に通りにくくなります。返済負担率が35%はあまり数字としては大きくなさそうに見えますが、実際には年収の6倍から7倍を借りているときにこの額になります。
どのくらいまで借入できるのか
返済負担率は、貸金業法における総量規制と同様のものとして扱われます。法的な規制ではありませんが、金融機関が不動産担保ローンの審査で使う数字です。このローンでは不動産というしっかりとした担保があるため審査は通りやすいですが、それでも返済負担率の35%を超える借入は困難です。年収のおよそ5倍から7倍程度までが審査で出る融資額と考えましょう。銀行やローン会社によっては担保価値によって多少の変動はあります。たとえば東京スター銀行の不動産担保ローンでは、申込条件として年収200万円以上とされており、最低ラインの収入が確保されていれば担保価値次第で融資額を決める方針を採っています。
他社での借入状況も不動産担保ローンの審査対象
他社での借入状況のチェック
不動産担保ローンも他のカードローンやおまとめローンと同様に、他社でどのような借入をしているのかを審査の対象とします。具体的には、借入総額、借入件数、毎月の返済額、また直近のおよそ2年の返済状況などを調査して判断します。これは申込書で自分から申告もしますが、ローン会社も調査して誤りや虚偽の記載がないかをチェックします。記入ミスではなく虚偽報告と判断されると審査には通過できません。
調査する方法
金融サービスを提供しているローン会社や銀行、消費者金融業者、信販会社は互いに情報を共有しています。金融に関する個人の情報は、金融機関が共同で設立した信用情報機関に収集されており、加盟している金融機関は個人名や住所、生年月日などで特定した申込者の利用状況を閲覧できます。
重視される情報
個人の金融情報で重視されるのは、借入の金額ではなく、実際には借入件数です。同じ50万円の借入でも、1社から借入している場合と5社から10万円ずつ借入している場合では、前者が圧倒的に審査では有利です。後者はそれだけ審査に通りにくい人と判断されます。1社から50万円を借りることができるというのは、それだけ信用力があるということを意味します。それを毎月遅延なく返済しているときには、審査では有利と言っていいでしょう。返済の延滞を繰り返す人は審査で不利になります。金融機関では、申込があったとき、申込者の主に24ヶ月分を調査していると推測されています。銀行口座への入金忘れということもありますので、年に1回程度の延滞であれば許容範囲です。
比較的甘い
不動産担保ローンは、不動産を担保として提供するものですので、金融機関とすると返済が滞った場合には担保物件を売却すれば融資額は回収可能です。そのため、個人信用情報については多少甘いと言われています。遅延を繰り返していたり、自己破産などの金融事故を起こしていれば問題ですが、実際には担保をしっかり差し出していれば、審査は順調に進むでしょう。
不動産担保ローンでは勤続年数も審査される
安定性の証明
不動産担保ローンは担保付きローンとはいえ、金融機関としても担保さえ取れれば良いと考えているわけではありません。できれば利息付きでしっかりと最後まで返済してもらいたいと考えています。そのためには、申込者に安定して継続的に返済を続ける能力があることを審査する必要があります。このとき、安定・継続を意味するのが勤続年数です。法人や個人事業主であれば業績がそれに該当します。長年同じ仕事を続けていることは、なによりも安定性を証明します。
勤続年数・業歴の持つ意味
勤続年数が長いということは、短い人に比べて、その仕事や会社を辞める可能性が低いと判断されます。長年勤めているのだから、そのまま継続して働いて、返済をしっかりしてくれるだろうと金融機関は判断します。勤続年数が長い人は重要な役職に就くことも多いですし、辞める確率は減っていき、給与は上がりますので返済が滞るリスクが低いと考えられます。会社や法人の場合は、継続して事業を行っていること自体は高い信頼性を意味します。会社は一般的には起業して3年以内に70%が倒産したり破綻したりします。業歴が長いことは、クライアントからの信頼がある会社であって、それだけ安定していることを意味します。
有担保ローンでの考え方
不動産担保ローンは有担保ローンですので、返済能力に関する審査はゆるめと考えて良いでしょう。最も重視されるのは担保価値です。審査の可否はおおよそ担保価値で決定します。その後の融資額の審査において、たとえば勤続年数が長ければ考慮される可能性があります。また、有担保ローンのメリットのひとつとして、起業して間もない会社・法人・個人事業主でも高額の利用が可能ということが挙げられます。一般的には起業して1年未満の法人や個人事業主に対して法人カードの発行などは困難ですが、有担保である不動産担保ローンであれば審査に通過できる可能性が高くなります。ただし、事業に失敗して返済が滞った場合には不動産を失いますので、良く検討してから申込しましょう。
不動産担保ローンの審査では税金の未納は大きなマイナスポイント
不動産担保ローンの審査と税金
所得税や住民税、固定資産税といった税金は不動産担保ローンでは重視されます。住宅ローンや通常のカードローンでは問題とならなくても、不動産担保ローンでは違ってきます。こういった税金の支払いが遅延・延滞している状態では不動産担保ローンの審査に通過できないことが多くあります。ローン会社や銀行の担当者からは、税金を払ってから申込をしてもらいたいと言われるでしょう。それ程に税金の未納は問題となります。
税金とローンとの関係
不動産担保ローンは担保となる物件に抵当権を設定して、借主の返済が不能になった場合に、担保物件を売却してローンの残高を回収することになっています。仮に返済が止まっても、不動産を売れば融資額が回収できるので、不動産担保ローンは金融機関としてはリスクが少ないローンです。ただ、税金に滞納や未納があるとき、滞納があまりに続くときには自治体から財産の差し押さえが実行されます。財産として重視されるのは不動産です。差し押さえした後でも返済が実行されないときには、自治体は不動産を競売にかけて現金化します。このとき、不動産担保ローンの抵当権よりも、抵当権設定以前に納付期限のある税金が優先となります。金融機関にとって、自分が付けた抵当権よりも先に税金の回収が実行されてしまうため、回収額が減ってしまいます。
税金を払ってから申し込む
税金の滞納や未納があって、なお不動産担保ローンを利用するという場合には、金融機関はこの優先順位を警戒して担保価値を低く見積もることにしています。税金の法定納期限のほうが抵当権設定日より早い場合は、税金が優先です。そのため、不動産担保ローンの審査では税金の未納・滞納があるかどうかは重要な項目となっています。未納があるからといって必ずしも審査に落ちるとは限りませんので、もし申込時に未納税金があるときは正直にその事実を申告しましょう。融資額の一部を税金の支払いに使うことを条件に審査が通るケースもあります。
不動産担保ローンの審査で雇用形態はどの程度重視されるか?
どういったローンでも審査対象
不動産担保ローンだけでなく、カードローンやマイカーローンなどのローン全般で雇用形態や職種、業種は審査の対象となります。雇用形態とは、正社員か派遣社員か契約社員なのかということを指します。アルバイトやパートも雇用形態の種類です。職種はたとえば営業職や開発職、事務職といった仕事の内容のことです。また、業種によって審査結果も変わってきます。大手メーカーなのか中小の工場勤務なのか、サービス業や小売業といった所属する会社の業界を業種と呼びます。この3つは不動産担保ローンでもほぼ必ず審査対象です。
安定しているかを知りたい
このような雇用に関する項目を審査対象とするのは、その人が安定した収入があるかを知りたいからです。アルバイトやパートよりも社員の方が安定していると判断されますし、契約社員よりも正社員の方が安定しています。職種は、たとえば営業職よりも事務職の方が安定しているとみなされます。事務職は成果型ではなく一定額の給与が安定して支払われますが、営業職は業績と給与が連動しているとみなされて安定性を欠くと判断されます。
個人事業主の場合は?
個人事業主や法人の場合には、業種が重視されます。たとえば弁護士事務所やクリニックなどは、国家資格が必要ですし、ビジネスとして安定しているとみなされます。新規性の高い事業やベンチャー企業などは安定性は低いと判断される傾向があります。飲食業はその中間程度と考えましょう。不動産担保ローンは不動産という動かしがたい担保を提供するローンであるため、担保価値が最重要です。信用力が足りなくても、それを補えるというのがメリットとも言えます。通常のカードローンなどの審査に通らなくても、不動産を担保にすると審査に通過することが多くあります。返済が止まると担保とした土地や建物を失うというリスクがありますので、申し込むにあたっては充分な検討をしましょう。